肺線維化プロセスの分子生物学的研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09670604
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 吉澤 靖之 東京医科歯科大学, 医学部・附属病院, 教授 (20174914)
• 研究分担者: 宮坂 信之 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (30157622)
• キーワード: 特発性肺線維症 / 慢性過敏性肺炎 / IL-2RmRNA / 細胞性免疫 / 特異的病因抗原 / 合成ペプチド / IL-6 / TGF-β

研究概要

肺の線維化プロセスを解明するため、線維化を伴う慢性過敏性肺炎の病態解明を行った。1)全国調査による慢性過敏性肺炎36例の検討では、(1)軽い急性症状(微熱、咳嗽、労作時呼吸困難)を繰り返して線維化をきたす群と当初より線維化を主体とする特発性肺線維症に似た群とがある、(2)喫煙は急性症状を抑えて慢性化に関与する因子である、(3)画像上蜂窩肺は約37%にみられた、(4)進行した例ではステロイド剤は無効で、進行性に肺全体の線維化をきたす(肺線維症)ことを明らかにした。一方、線維化病変をきたして慢性化する傾向にある鳥飼病25例を検討中であるが、特発性肺線維症と診断されていた例が多く、その診断は難しく抗体測定で陰性例もあり、細胞性免疫の有無を抗原添加リンパ球増殖試験により、また可能であればIL-2RmRNA表現の亢進の有無でチェックする必要がある。この点慢性鳥飼病は早期に鳥接触を避けないと進行性であり早期に診断をするため細胞性免疫をチェックする。次に鳥飼病に特異的な病因抗原精製を行い、そのアミノ酸配列を決定したが、合成ペプチドを用いての細胞性免疫反応の検討は鳥飼病患者のみ反応を示し、無症候性鳥飼育者、正常人では反応を示さなかった。また急性鳥飼病と慢性鳥飼病の比較検討より線維化に関与するサイトカイン・ネットワークではIL-6、TGF-βが重要である可能性を示している。この点自覚症状をきたさない持続する局所の炎症性病変が線維化につながると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Yasunari Miyazaki: "Effects of a Neutrophil Elastase Inhibitor(ONO-5046)an Acute Pcdmonary injury indaced by Tumor Necrosis Factor Alpha(TNFα)and Activated Neutrophils in Isolated Perfased Rabbit Lungs." Am J Respir Crit Care Med. 157(1). 89-94 (1998)
• [文献書誌] Yasunari Miyazaki: "Sarcoid reactions scattered in the tumor-bearing lung pareuchyma and reglonal lymphnodes associated with pulmonary carclnoid." Internal Med. 37(3). 304-306 (1998)
• [文献書誌] 吉村 信行: "環境暴露1ヶ月後に症状が顕在化するイソシアネートによる慢性過敏性肺炎の1例" 日本呼吸器学会誌. 36(7). 627-631 (1998)
• [文献書誌] Harumi Shishido: "Multiple drug-resistant Nocardia asteroides isolated from a patient with pulmonary nocardiosis." Respir Med. 82. 873-893 (1998)
• [文献書誌] Yasuyuki Yoshizawa: "Chronic Hypersensitivity Pueumonitis in Japan-a nationwide epidemiological survey-" J Allergy Clin Immunol. (in press).
• [文献書誌] Megumi Sawada: "Tissue Factor and Thrombomodulin Expression in II Lung Cancer Cell Lines and 32 Cases of Surgically Resected Lung Cancer" Brit J Cancer. (in press).
• [文献書誌] 吉澤靖之: "内科治療ガイド" 文光堂, 3 (1998)
• [文献書誌] 吉澤靖之: "呼吸器疾患最新の治療 1998-2000" 南江堂, (1998)