気管支平滑の収縮・弛緩におけるK^+チャンネルの活性を検討し、気管支拡張のメカニズムを解明することは、喘息治療薬の開発ひいては喘息病態の解明に寄与することができる。今年度においては、1)βアドレナリン受容体刺激剤のdesensitizationの機序にstimulatory G蛋白(G_s)が、気管平滑筋において抑制的に関与することが明らかにできた。2)気管支拡張剤として新しく開発されている水溶性のフォルスコリン誘導体(NKH477)には、細胞内Ca^<2+>濃度減少を伴う濃度依存性の気管平滑筋弛緩効果があり、その効果の発現にCa^<2+>依存性Kチャンネル(BKCa)の活性化が主要な役割を果たすことが明らかにできた。BKCaの活性化による気管平滑筋の弛緩は電位依存性Ca^<2+>チャンネル(VDC)を介するCa^<2+>流入の変化に起因することが示唆されている。NKH477は気管平滑筋の細胞内において、アデニル酸シクラーゼによるcyclic AMPの産生を亢進させ、このcyclic AMPがBKCaの活性化をもたらすものと考えられる。 以上のように、研究計画にそった成果の一部は、欧米誌に発表することができた。現在検討中のPDE阻害薬、PACAPなどのペプチド類の気管平滑筋弛緩作用とその機序の検討を平成10年度の研究計画に基づき、細胞内Ca^<2+>濃度などの指標と BKCaチャンネルの選択的阻害薬であるiberiotoxinを用いて、さらに詳細に解析する予定である。なお、PACAPなどのペプチド類の気管平滑筋弛緩作用については、in vivo(モルモット)においてもその効果と機序の一部を明らかにすることができ公表準備中である。
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