研究概要 |
前年度までに経鼻持続気道陽圧(nasal continuous positive airway pressure:nCPAP)治療適応の中等・重症閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)患者の凝固VII因子活性(FVIIc)をnCPAP治療前後で測定し、長期のnCPAP治療により上昇していたOSAS患者のFVIIcは有意に低下することを明らかにした(Chin K,et al.QJMed 91:627-33,1998)。今年度は、線溶系に関連するPAI-1の産生にも関与するとされている、脳・心血管障害発生のリスクファクターのひとつである腹部内臓脂肪量にも着目し、nCPAP治療前後に腹部内臓脂肪量を腹部CTにて測定したところ、内臓脂肪量は約8ヶ月のnCPAP治療により、体重の減少が無いにもかかわらず有意に低下した(Chin K,et al.Circulation 100:706-12,1999)。この研究の経過中、OSAS患者は皮下脂肪/内臓脂肪量が40%以上、あるいは内臓脂肪量200cm^2以上を示す内臓脂肪症候群を示すことがほとんどであった。脂肪細胞から主に分泌され、摂食や代謝活動に大きな影響を与えるレプチン濃度を血清で調べた所、nCPAP治療3-4日でコルチゾール値、インスリン値に変化が無いにもかかわらず、OSAS患者の血清レプチン濃度は有意に低下していた。この事は、夜間の閉塞性睡眠時無呼吸が、患者の摂食や代謝活動に大きな影響を与えるレプチン濃度に有意な影響を与える事を示しており、OSAS治療の重要性を示唆する所見であった。
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