研究概要 |
本研究の目的は脳・心血管障害発症の独立因子である凝固線溶系(凝固7因子活性:FVIIc,type 1 plasminogen activator inhibitor:PAI-1)の異常の有無を閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)患者において明らかにして、経鼻持続気道陽圧(nasal continuous positive airway pressure:CPAP)治療の効果を凝固線溶系から明らかにすることであった。また、研究の過程でPAI-1とも関連し、虚血性疾患の発症とも関連する内脂肪量のnCPAP治療前後の変化も検討した。内臓脂肪量に関連が指摘されている血清レプチン濃度も併せて解析した。 OSOA患者(n=15)のFVIIcは6ヶ月以上のncPAP治療により治療前141±12%より治療後111±6%へと有意に低下した。FVIIcは虚血性疾患発症の独立因子なので、nCPAP治療は高活性を呈しているFVIIcを改善し、OSAS患者の虚血性心疾患発症を予防する可能性がある。脳・心血管障害発生のリスクファクターのひとつである腹部内臓脂肪量もnCPAP治療前後に腹部CTにて測定したところ、内臓脂肪量は約8ヶ月のnCPAP治療により、体重の減少が無いにもかかわらず有意に低下した(n=13)。この研究の経過中、OSAS患者は皮下脂肪/内臓脂肪値が40%以上、あるいは内臓脂肪量200cm^2以上を示す内蔵脂肪症候群を示すことがほとんど出会った。脂肪細胞から主に分泌され、摂食や代謝活動に大きな影響を与えるレプチン濃度を血清で調べた所、nCPAP治療3-4日でコルチゾール値、インスリン値に変化が無いにもかかわらず、OSAS患者の血清レプチン濃度は有意に低下していた。この事は、夜間の閉塞性睡眠時無呼吸が虚血性心疾患発症に有意な影響を与える腹部内臓脂肪量や、患者の摂食や代謝活動に大きな影響を与えるレプチン濃度に有意な影響を与えることを示しており、OSAS治療の重要性を示唆する所見であった。
|