研究概要 |
ヒト気管支粘膜上でのAspergillus fumigalus分生子の付着、上皮細胞内への侵入、さらには気道線毛上皮傷害と気管支粘膜下への菌糸の侵入に至る機序をヒト気管支粘膜Organ cultureを用いて超微形態学(走査型および透過型電顕)的に検討した。平成9年度から引き続く検討の結果、以下の知見を確認した。1)A.fumigatus分生子は、気管支粘膜Organ culture上に添加後1〜6時間目には傷害された上皮細胞を中心に付着し、2)6時間目前後には上皮細胞間隙並びに線毛上皮細胞内へ侵入(上皮細胞内への取り込み像)、3)12時間目以降は時間経過とともに顕著な上皮傷害を生じ、4)18時間目以降は増生菌糸が著しい上皮傷害を生じながら上皮を貫いて気管支粘膜下組織へ伸展し同時に線毛細胞の著しい剥離脱落所見を呈した。平成10年度は上記の実験を繰り返し行うとともに、とくに6時間目以降に認められた分生子の上皮細胞内取り込みの機構に関する検討を新たに行い下記の成績を得た。1)気管支粘膜Organcultureをcolchicine(microtubule阻害物質)およびcytokalasin D(actin filament阻害物質)処理により、A.fumigatus分生子の上皮細胞内取り込みが有意に抑制され、A.fumigatus分生子の上皮細胞内侵入に上皮細胞のcytoskeleton機構の関与が示唆された。2)A.fumigatus分生子の加熱処理(65℃,90分)によって分生子の気管支上皮への付着、侵入が有意に抑制され、A.fumigatus分生子の上皮細胞への付着・侵入には、アスペルギルス分生子側の因子も関与していることが示された。以上はアスペルギルスに関して新たな知見であり、平成10年10月の日本医真菌学会総会および平成11年3月の日本呼吸器学会総会で報告した。また英文の原著論文として現在投稿中である。
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