研究概要 |
ヒト気管支粘膜上でのAspergillus fumigatus分生子の定着、発芽及び菌糸増生、上皮細胞内への侵入、さらには気道線毛上皮傷害および気管支粘膜下への菌糸の侵入に至る機序をヒト気管支粘膜の"Organ culture"法を用いて光顕的並びに超微形態学的(走査型電顕および透過型電顕)に検討し以下の知見を得た。1)A.fumigatus分生子は"Organ culture"に添加して1〜6時間後には傷害された上皮細胞を中心に付着した。2)6時間目前後に分生子の上皮細胞の間隙並びに線毛細胞内への侵入(または取り込み)所見が認められた。3)12時間目以降は時間経過とともに線毛細胞の剥離脱落を含む顕著な上皮傷害を呈した。4)18時間以降は増生した菌糸が上皮を貫いてあるいは上皮細胞の間隙を縫って気管支粘膜下組織へ伸展する所見を認めた。また6時間目以降に認められた分生子の上皮細胞内侵入(または取り込み)の機序に関する検討によって以下の成績を得た。5)気管支粘膜Organ cultureのcolchicine(micro-tubule 阻害物質)またはcytochalasin D(actin filament 阻害物質)による前処理によってA.fumigatus分生子の上皮細胞内取り込みが有意に抑制され、A.fumigatus分生子の上皮細胞内への侵入には上皮細胞のcytoskeleton機構の関与していることが示唆された。6)A.fumigatus分生子の加熱処理(65℃,90分)によって分生子の気管支上皮への付着、侵入が有意に抑制されA.fumigatus分生子の上皮細胞への付着・侵入にはアスペルギルス分生子側の因子も関与していることが示された。以上はアスペルギルスの気道内定着と周囲組織への侵入に関する新たな知見であり、平成10年4月の日本感染症学会総会、平成10年4月と平成11年3月の日本呼吸器学会総会、平成10年10月の日本医真菌学会総会で報告した。
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