研究概要 |
肺胞上皮細胞による蛋白分解酵素・蛋白分解酵素阻害物質の産生とサイトカイン・成長因子による制御およびタバコ煙による肺胞上皮細胞傷害に関する検討を行なった。 1)Matrix Metalloproteinase-3(MMP-3)およびTissue inhibitor of metalloproteinase-3(TIMP-3)のmRNA発現をquatitative RT-PCRを用いて検討した。肺胞上皮細胞としては肺胞上皮様細胞株A549および初代培養肺胞上皮細胞を用いた。何れの細胞でもMMP-3,TIMP-3のconstitutiveなmRNAexpressionが認められた。炎症性のサイトカインであるIL-1βと線維化に関係した成長因子と考えられるTGF-β1は共にTIMP-3・MMP-3の産生を亢進させたが、IL-1βはMMP-3の発現増強が強く、一方、TGF-β1はTIMP-3の発現増強がより大きく、それぞれ細胞外基質を分解と蓄積を促進する可能性が示唆された。 2)タバコ煙による肺胞上皮細胞傷害の指標として、タバコ煙溶液の肺胞上皮細胞の生存率に与える影響を検討した。タバコ煙溶液(CSE)をA549細胞に加えると濃度依存的に細胞の生存率が低下した。10-20%のCSEはnecrosisを起こすのに対し,1-5%CSEはapoptosisを引き起こした。またCSE中のapoptosis誘起能は主として揮発性物質であることが示された。更にCSEをAldehyde dehydrogenaseで処理すると効果が減弱した。Superoxide dismutase,N-acetylcysteineの添加は細胞死を抑制し、CSEによる細胞死にはaldehydeおよびoxidantが関与する可能性が示唆された。
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