研究概要 |
気管支喘息ではナイーブT細胞のアレルゲン特異的あるいは比較的ポリクローナルなTh_2細胞への偏倚した分化が認められ,それは特異的IgE抗体産生のみならず,気道過敏性の亢進など,病態形成に中心的な役割を果たしている。本研究ではこのT細胞の偏倚した分化の原因を明らかにすることを試みた。前年度に引き続きサイトカインの発現と遺伝子の多型性に注目した。種々の遺伝子の多型性(5'IL-4転写調節領域,IL-4受容体,β_2-アドレナリン受容体構造遺伝子など)の検討では,それ単独の多型性では気管支喘息の発症との関連性は認められなかった。しかしβ_2-アドレナリン受容体構造遺伝子(Arg16Gly)とIL-4受容体遺伝子(Val50Ile)の多型性の組み合わせにおいて,アトピー型喘息患者で増加している組み合わせが存在していた。この事実が有意であるのか否か,今後さらに症例を増やして検討を行なう。またIL-4の作用を阻害する化合物について,企業との協同研究を実証した。マウスのリンパ球をLPSとIL-4で刺激して誘導されるIgE発生を指標にスクリーニングを行ない,IgE特異的に,用量依存的に抑制する非ペプチド性化合物(#8921)を見出した。本科号物はIL-4で誘導されるCイプシロンgermline transcriptの発現やTh_2細胞の分化も抑制した。マウスの喘息モデルでは,特異IgE抗体産生ならず,抗原吸入による肺への炎症細胞,とくに好酸球の浸潤の抑制も認められた。現在,化合物#8921の詳細な作用機序の解析を進めている。
|