研究概要 |
我々は既に,細胞の無限増殖に必須と考えられる酵素テロメラーゼが,ヒトリンパ球で増殖刺激により活性化されることを報告してきた.Tリンパ球は抗原特異的免疫応答を司り,気管支喘息の基本病態であるアレルギー性炎症を誘導する.そこで,抗原特異的免疫反応の記憶維持機構に対するTリンパ球テロメラーゼの関与を明らかにするため,抗原刺激による末梢血Tリンパ球テロメラーゼ活性を測定した.ハウスダスト感作アトピー型喘息患者末梢血単核球をハウスダスト抗原刺激にて一週間培養し,TRAPアッセイによりテロメラーゼ活性を半定量的に評価した.ハウスダスト抗原刺激により,ハウスダスト感作喘息患者Tリンパ球に活性の増強を認めたが,健常人および非感作喘息患者には有意な増強が認められなかったことより,テロメラーゼは特異抗原に対するリンパ球のクローン的増殖に関与していることが推察された. さらに,リンパ球がその病態に関与する膠原病においても,疾患活動性とリンパ球テロメラーゼ活性が関連していることを明らかにした.即ち,128例の非腫瘍性呼吸器疾患患者の気管支肺胞洗浄液細胞を検討すると,テロメラーゼ活性が検出された4例全例においてリンパ球比率が上昇し,かつステロイドの全身投与を必要とした疾患活動性の高い免疫関連疾患(うち3例が膠原病肺)であった。一方,慢性関節リウマチ患者の活膜組織においては56%(14/25)にテロメラーゼ活性を検出したが,変形性関節症の滑膜組織では活性を認めなかった。さらに,テロメラーゼ活性陽性のリウマチ患者では,組織内リンパ球浸潤度が高く,早期に手術を要した疾患活動性の高い症例の傾向を示した。 以上のことから,免疫・アレルギー関連疾患では、テロメラーゼはその病態解明・疾患活動性の指標となるのみならず、新たな治療戦略のターゲットとなることも期待される。
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