研究概要 |
肺の線維化は肺組織の非可逆的変化であり、炎症に引き続く治癒過程とも考えられ、進行性の場合は予後不良の因子となる。このため、肺線維化の病態解析や治療法の開発は重要な研究課題の一つである。プロスタグランディン(PG)E2は線維芽細胞増殖やコラーゲン産生を抑制し線維化に対しては抑制因子の一つと考えられている。一方、肺線維芽細胞や肺胞マクロファージ/単球からのPGE2産生はTh細胞から産生されるサイトカインで調節を受けている。これらの知見を基にPGE2産生とサイトカインの関係を解析し治療法開発の基礎的検討をおこなった。得られた結果は以下の通りである。(1)肺胞マクロファージ・単球のPGE2産生はTh1サイトカインであるIFN-γでは影響を受けなかった。一方Th2サイトカインであるIL-4,IL-10,IL-13はPGE2産生を抑制した。Th2サイトカインはCOX-2発現を抑制しシクロオキシゲナーゼ活性を低下させた。この抑制の程度はIL-4>IL-10>IL-13の順であった。また、IL-4は抗炎症作用を有するアラキドン酸代謝物である15-HETEやLipoxinなどの律速酵素15-lipoxygenase産生を増強した。従来の報告を考慮するとTh2サイトカインは線維化の過程では抗炎症に作用するが線維化に対してはむしろ増強的に作用する可能性が示唆された。また、特異的なサイトカイン産生抑制薬(FR167653)は単球・マクロファージからの炎症性サイトカイン産生を抑制するのみならず、COX-2発現を制御しPGE2産生を抑制し、新しい抗炎症薬となる可能性が示唆された。(2)ブレオマイシン肺線維症動物モデルから採取した線維芽細胞のPGE2産生能は対照に比し低下し、PGE2産生低下が線維化に関与している所見を確認した。
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