実験1、galectin-8組み換え蛋白の作成。 galectin-8 cDNAの全reading frameを挟み込む2 primerを合成し、新鮮肺組織からguanidine法にて抽出したpolyARNAを鋳型とし、逆転写-PCR反応をおこなった。その結果、galectin-8のcDNA分子量と完全に一致する950塩基対のdsDNA産物を得た。次にこの産物をplasmid pGEM-Tに繋ぎこみ増幅した後、expression vector pET-11dに挿入し、BL21(DE3)PLys大腸菌株を宿主とし、IPTGにて組み換え蛋白を発現させた。粗な大腸菌抽出物をPAGE電気泳動で解析したところ、非発現コントロールには見られないgalectin-8の分子量に一致する36kDの蛋白バンドの生成を確認した。このクル-ドな抽出物をlactoseアフィニチイカラムに流し、カラムに結合した蛋白を溶出したところ、36kDのシングル蛋白バンドを得た。以上の実験から、RT-PCRによって得られた塩基対はgalectin-8をcodeするcDNAであり、組み換え法によって生成された人工galectin-8蛋白は糖を認識する生物活性を保持する事が確認された。現在、このgalectin-8に対する抗体を作成し、肺組織内での同蛋白の局在を免疫組織化学法により検索している。 実験2、galectin-GST fusion proteinの作成と利用。 galectin-8がいかなる相補的な物質を認識するのかとの疑問に答える方法として、galectin分子にextra epitope sequence(以下EESと略す)を遺伝子工学を用いて繋ぎ、このEESに対する特異抗体により、間接的にgalectinの付着部位を形態的に検索する目的のため、実験1で得たgalectin-8cDNAをglutathione S transferase(GST)fusion vectorのMCS siteに差し込み、galectin-8蛋白分子の上流にEESとしてのGSTが繋がったGST-galectin8 fusion proteinを作成した。このfusion proteinで組織を染色し、ついで抗GST抗体(ヤギ)、ついで蛍光ラベルした抗ヤギIgG(ウサギ)の3段階法で間接的に組織内でのgalectin-8の結合部位が検索したところ、肺の特異的な構造が強染し、fusion proteinをomitするか拮抗糖で吸収すると染色が消失することから、galectin-GST fusion proteinの使用は実験2の目的達成に極めて有効であることが判明した。
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