研究概要 |
肺の線維化は、炎症の遷延化と気管支・肺胞上皮の損傷・脱落と、それに続く線維芽細胞の増殖、すなわち組織のリモデリングの結果起こる。我々は、この過程において炎症細胞、気管支・肺胞上皮のアポトーシスが関連しているのでないかという仮定のもとに研究を行ってきた。その成果は20編に及ぶ英文論文として発表している。以下、その要旨を述べる。 1)線維化肺には細気管支・肺胞上皮に過剰なDNA損傷とそれを修復するp53,p21(Waf1/CIP1)の発現が増強している。 2)線維化肺では細気管支・肺胞上皮にアポトーシス関連遺伝子Fasの過剰発現と肺に浸潤するリンパ球に細胞傷害性に作用するFas ligand(Fas L)が発現し、上皮細胞のアポトーシスを認める。 3)マウスのブレオマイシン肺臓炎モデルにおいて、アポトーシス関連遺伝子Fas,FasL,p53などが発現し、上皮のアポトーシスを誘導する。 4)マウスにアポトーシスを誘導する抗Fas抗体を吸入させると上皮のアポトーシスを生じ、線維化肺が形成される。 5)Fas,FasLの機能不全マウスは、ブレオマイシンによる肺線維化誘導に抵抗性であり、可溶性Fas(hFas-Fc)投与によって線維化が抑制され、肺線維化におけるFas-Fas Lシステムの重要性を示した。 6)LPS投与による急性肺損傷マウスには、細気管支・肺胞上皮、血管内皮細胞のアポトーシスが認められ、アボトーシス阻害剤(Z-VAD)投与はアポトーシスを抑制し生存期間を延長した。 以上の成績は、肺線維化の成因に細気管支・肺胞上皮のアポトーシスが関連することを示すものである。今後は、アポトーシス分子機構の解明と、抑制因子による線維化肺の治療研究を展開したいと考えている。
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