研究概要 |
【目的】特発性間質性肺炎(IIP)の病態における血管内皮細胞の変化とその病態における役割を知るためマウスブレオマイシン(BLM)誘発肺線維症モデルを用いて接着分子intercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)の発現や動態を検討した.また,抗ICAM-1抗体によって肺の線維化が抑制し得るか否か検討した. 【方法】ICRマウスにBLMl50mg/kg ivして1)BALF中総細胞数,細胞分画の変化,2)血中およびBALF中の可溶型ICAM-1値の変化,3)BALF中肺胞マクロファージにおけるICAM-1発現のFACSによる解析,4)肺組織におけるICAM-1発現の免疫組織学的解析を行った.BLM投与後Day 19までAnti-ICAM-1mAb(KAT-1)を隔日投与(100mg/body i.p.)し効果を検討した. 【結果】BLM静注直後より血管内皮におけるICAM-1発現が増強し,炎症細胞浸潤に関与している.肺胞上皮細胞や肺胞マクロファージなど肺胞内におけるICAM-1の発現増強も早期より認められたが,線維化の形成期時期ではむしろ低下した.BAL中の可溶型ICAM-1濃度は炎症期には上昇するが、28日後の線維化形成期には低下していた。炎症形成期に抗ICAM-1抗体を用いることで炎症細胞浸潤及びそれに引き続く線維化形成を抑制しえた. 【総括】BLMモデルにおいては主として比較的早期の炎症形成期の病態にICAM-1が関与していることが示唆された.早期のICAM-1発現は,炎症細胞浸潤を介して線維化形成に関与しているものと考えられた.後期の線維化形成期では,肺胞腔におけるICAM-1の発現が,特に肺胞マクロファージでは低下していたが,その意義は明らかでなかった.
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