われわれは5リポキシゲナーゼ遺伝子プロモーター領域に興味深い遺伝子多型を発見し、それが遺伝子の発現調節に関わっていることを明らかにした。本研究の目的は、日本人健常者および喘息患者についてこの遺伝子多型と喘息の病型、重症度、治療に対する反応性との相関を検討することにより、同遺伝子多型の臨床的意義を明らかにすることである。 慶應義塾大学病院ならびに関連病院に通院中の喘息患者211例、健常人93例についてSSLP(Simple sequence length polymorphisms)法による5リポキシゲナーゼ遺伝子プロモーター領域遺伝子多型解析を行った。その結果、日本人においても同多型が存在すること、しかしその発現頻度は白人種、黒人種のいずれとも明らかに異なることが明らかとなった。さらに病型、重症度など臨床データの解析により、特定のアレルの発現頻度が小児喘息の既往がありダニ抗原に対する特異的IgEが陽性である症例において高いことを見いだした。Irvinらは5リポキシゲナーゼ欠損マウスにおいて抗原特異的IgG、IgE産生が抑制されることを報告しており (Am.J.Physiol.1997)、我々の結果との関連が興味深い。 今後さらにこの遺伝子多型とロイコトリエン受容体拮抗薬に対する反応性との関連について解析を行っていく予定である。
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