研究概要 |
21%酸素環境下で飼育した対照群(N群)と高濃度酸素環境下で飼育した損傷肺を有する群(H群)において還流肺を作成し呼吸性アシドーシス(RAC;21%O_2,15%CO_2,背景ガスN_2)ならびに代謝性アシドーシス(MAC;21%O_2,5%CO_2,背景ガスN_2で換気しながら還流液に少量の塩酸を加え、CO_2分圧一定のまま細胞外pHを変化)を負荷した場合に肺細葉内微小血管が如何なる動態を示すかについて解析した。肺微小血管動態を共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。微小血管構築把握のためにFITC-dextranを還流液中に添加した。呼吸性ならびに代謝性アシドーシスの血管収縮・拡張に及ぼす血管作動性物質、プロスタグランジンならびに一酸化窒素(NO)の関与を明らかにするため構造型ならびに誘導型シクロオキシゲナーゼ(COX-1,COX-2)の阻害剤であるインドメサシン(IN群)、誘導型COX-2の特異的阻害剤であるNS-398(NS群)、構造型ならびに誘導型NO合成酵素(ecNOS,iNOS)の阻害剤であるL-NAME(L群)、iNOSの特異的阻害剤であるアミノグアニジン(AM群)を加えた。【結果】1)N群に較べH群では、RAC条件において平均肺動脈圧の上昇率が大きく、N群で認められた細静脈拡張が消失した。しかしながらL投与において細静脈の拡張は回復した。L投与下のRAC条件下ではH群の細動脈も拡張した。以上の反応はAM投与によっては発生せず、IN投与によって消失した。しかしながら、これらの反応はNS投与によっては修飾を受けなかった。2)RAC条件で認められた上記の興味ある反応はMAC条件下では認められなかった。以上の解析結果より、高濃度酸素暴露損傷肺では細静脈を中心にCO_2による拡張反応が消失するが、この拡張反応の消失はecNOSのup-regulationに起因する過剰のNOによってCOX活性、特にCOX-1が抑制されたためだと結論した。
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