研究概要 |
チオールアンチオキシダントはオキシダント傷害から細胞を防御することに関与している.本研究では,培養肺線維芽細胞のアポトーシス制御におけるチオールの役割について検討した.肺線維芽細胞をシスチン欠乏培地あるいはチオール酸化剤含有培地で培養することによりチオールを枯渇させると,オキシダントが集積し細胞はアポトーシスに陥った.この細胞死はアンチオキシダントであるpyrrolidinedithiocarbamate,アスコルビン酸,カタラーゼにより抑制された.チオールの枯渇はロイコトリエンC4,D4,E4の産生およびp38-mitogen-activated protein kinase (MAPK)とその核内基質であるATF2の選択的リン酸化も惹起した.チオール枯渇によるアポトーシスは5-lioixygenase inhibitor (AA861),leukotrien antagonists (FPL55712,ONO1078), そしてp38-MAPK inhibitor (SB203580)によって完全に抑制されたことから,ロイコトリエン産生とp38-MAPKのリン酸化がアポトーシスの誘導に必要であることが推察された.ロイコトリエンの産生はアスコルビン酸によって,p38-MAPKのリン酸(アスコルビン酸,AA861,FPL55712によってそれぞれ抑制された.したがって,チオールの枯渇はオキシダントの集積,ロイコトリエンの産生およびp38-MAPKのリン酸化を介してアポトーシスを惹起するものと考えられた.
|