研究概要 |
経気道的にブレオマイシンを投与することにより実験的肺線維症モデルを作成した。ブレオマイシン投与後早期には,マクロファージ・好中球浸潤を伴い,1週間ほどで肺胞腔内に線維化が形成された。その後,線維化巣は気道上皮細胞・肺胞上皮細胞の再生により被われ,肺胞構造は改築像を示した。免疫組織化学による観察では,マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-1,-2,-9と,そのインヒビター(TIMP)-2がマクロファージ,再生上皮,線維化部の線維芽細胞に陽性であった。好中球には,MMP-9が強陽性であった。MMP_sの基質であるフィブロネクチン,I-,III-型コラーゲンの沈着を線維化巣に認め,後期では,再生上皮下にIV-型コラーゲンである基底膜形成を,線維化内にエラスチン沈着を認めた。DNA合成細胞であるBrdU陽性細胞は,肺胞腔内のマクロファージ,線維化巣の線維芽細胞,再生上皮細胞に高率に認められた。透過電顕にて,線維化に先立ち肺胞上皮基底膜の断裂所見が観察され,その断裂部位から線維芽細胞が肺胞腔内に侵入し,肺胞腔内で各種の細胞外基質の新生・沈着を示した。肺組織のGelatin zymographyによる観察では,コントロールに比較して,早期にMMP-9の優位な増加が,後期にMMP-2の優位な増加およびMMP-2の活性型/不活型の比率の優位な増加を認めた。当研究により,ブレオマイシン投与後早期には,主に好中球由来と考えられるMMP-9による上皮基底膜の断裂が起こることが示唆された。また,後期の上皮再生には,MMP-2特にその活性型の関与が示唆された。
|