研究概要 |
ヒト型パラインフルエンザウイルス4型のHN蛋白質の遺伝子解析および分子疫学的、血清疫学的解析を行った。また4型ウイルスの不完全増殖機構の解析も同時に行った。4B型ウイルスのHN蛋白質の遺伝子解析の結果から4A型ウイルスのHN蛋白質と糖鎖結部位の配列が2箇所異なることが判明した。point mutation法により4B型ウイルスのHN蛋白質cDNAを4A型ウイルスのHN蛋白質に変えたものを3つ作製し、これらをL929細胞に構成的に発現させ、flow cytometry法でモノクローナル抗体を用いて、抗原性を解析したところ、2箇所とも4AウイルスのHN蛋白質と同じにしたクローンの抗原性は4A型ウイルスのHN蛋白質と似た抗原性を示したが、完全には一致しなかった。4型ウイルスのみサブタイプに分かれるが、HN蛋白質の糖鎖が関与している可能性が示された。残されたL蛋白質の遺伝子は一部解析を行ったが完全解明には至らなかった。また小児の血清につき、モノクローナル抗体を用いて、4型ウイルスの検出をしたところ数%が陽性であったが、2型ウイルスなどとの交差反応も考えられ、さらなる解析が必要と思われた。 4型ウイルスの不完全増殖の機構の解析はMK2細胞、L929細胞をを用いて行った。MK2細胞では、トリプシンの添加により、ウイルスは増殖した。しかし、L929細胞での不完全増殖の理由は解明されなかった。両細胞とも、ウイルスは感染可能であり、MK2細胞では、トリプシン無添加でも、細胞内にNP,HNおよびF蛋白質が少量ながら認められ、PCR法で各蛋白質の遺伝子も検出されたが、L929細胞では、NP蛋白質、およびその遺伝子のみが検出可能なだけであった。L929細胞での4型ウイルスの不完全増殖の機構は明らかとはならなかった。
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