研究概要 |
背景:我々は平成7年度〜平成8年度の基礎研究C(ヒト肺動脈平滑筋細胞と内皮細胞のNOとPGI_2産生におけるサイトカインの役割)においてヒト肺動脈平滑筋細胞(HPASMC)は種々のサイトカインやLPSによりPGI_2を産生することを明らかにした.またそのPGI_2産生はNO供与剤(sodium nitroprusside:SNP)により増加し,NO合成酵素阻害剤(L-NMMA)で抑制されることを明らかにした. 方法:HPASMCのPGI_2産生におけるNOの役割を更に明らかにするためにNO供与剤,NO合成酵素阻害剤の他にヘモグロビン(Hb),メチレンブルー(MeB),superoxide dismutase(SOD)などがLPSやサイトカインによるHPASMCのPGI_2産生にいかなる影響を及ぼすかについて検討した. 結果:(1)Hb単独では平滑筋細胞のPGI_2産生に大きな影響はないが,10μg/mlのLPSあるいは200U/mlのIL-1βで培養する際20mMのSNPを同時に加えるとPGI_2産生が更に亢進するが,更に5mMのHbを同時に加えて培養するとSNPによるPGI_2産生の増幅効果は部分的に抑制された.(2)10μMのMeBをHPASMCに24時間作用させた後のPGI_2産生は有意に抑制された.LPSやIL-1βを作用させる時に10μMのMebを同時に加え培養するとLPSやIL-1βによるPGI_2産生促進効果が消失した。一方、LPSやIL-1βにMeBを加えた培養液にSNPを更に加えるとMeBによるPGI_2産生の抑制が部分的に解除された.(3)SOD単独ではPGI_2産生に変化はなかったが100U/mlのIL-1βや10μg/mlのLPSと同時培養した場合は平滑筋細胞のPGI_2産生が更に促進した.以上の実験結果よりNOが肺動脈平滑筋細胞のPGI_2産生を増強していることが推定された.
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