研究概要 |
背景と目的:我々は平成7年度〜平成8年度の基盤研究C(ヒト肺動脈平滑節細胞と内皮細胞のNOとPGl_2産生におけるサイトカインの役割)においてヒト肺動脈平滑筋細胞(HPASMC)は種々のサイトカインやLPSによりPGl_2を産生し,HPASMCのPGl_2産生はIL-6で抑制されることを明らかにした(Wen FO et al.Prostaglandins52:93-102,1996).今回HPASMCのNO産生に対するIL-6の役割を検討した. 方法:HPASMCを35mmペトリディッシュに植えconfluentになった時点で0,40,400,4000/mlのIL-6を含む培養液に換え更に24時間培養した.その間に培養液に放出されたNOを化学発光法により測定した.また10μg/mlのLPSや200U/mlのIL-1βに0,40,400,4000U/mlのIL-6を同時に加えHPASMCを24時間培養し,培養液中のNOを同様に測定した.LPSやIL-1βはHPASMCのNO産生を亢進させるが,それがIL-61によっていかなる変化をするかを観察した. 結果:(1)HPASMCをIL-6単独で培養した場合のNO産生はコントロールと差がなかった.(2)一方HPASMCをIL-1βやLPSで培養すると,HPASMCから放出されるNOは増加するが,10μg/mlのLPSや200U/mlのIL-1βにIL-6(0,40,400,4000U/ml)を同時に加え24時間培養すると,加えたIL-6の濃度に依存してNO産生が有意に低下した.IL-6は肺動脈平滑筋細胞のPGl_2産生を抑制するのみならずNOの産生も抑制することが明らかとなった.この結果はIL-6が生体内において,NOやPGsの産生を抑制する方向に働くことを示しており,抗炎症性サイトカインとしての一面を有している可能性がある.
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