ヒト小脳抽出画分に含まれるβ蛋白重合抑制活性の解析とその精製・同定

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09670638
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 玉岡 晃 筑波大学, 臨床医学系, 助教授 (50192183)
• キーワード: アルツハイマー病 / β蛋白 / 小脳 / 瀰漫性老人斑

研究概要

ヒト小脳抽出画分に含まれるβ蛋白(Aβ)重合抑制活性を解析するには、当該画分と合成Aβペプチドをインキュベートし、その重合度をメルクマールにすることになる。従って、当該画分に元々含まれるAβの情報が必要となるため、本年度は小脳のAβの定量を行なった。ヒト小脳皮質を4倍量のトリス生食緩衝液(TBS)でホモジェナイズし、メッシュ(50μm)に通した。Flow-through画分は100,000Xgで15分遠心し、上清と沈渣に分離した。得られた沈渣に4倍量の99%蟻酸を加え、ホモジェナイズし、同様に遠心して上清を回収した。
メッシュに残った小脳血管はTBSで洗浄後、99%蟻酸を加えてホモジェナイズし、遠心して上清を回収した。それぞれの上清に含まれるAβの分子種別の定量をサンドイッチELISAを用いて行なった。その結果、小脳皮質、小脳血管ではいずれもAβ42がAβ40よりも多く、また、Aβの総量の少ない時は、全長型のAβ1-42よりもN末端の切断などを受けた分子種も含んだAβ×-42が多いことが明らかとなった。以上より、小脳の主な老人斑である瀰漫性老人斑では最も初期にはAβx-42が沈着し、その後Aβの総量が増加するに従って、Aβ1-42やAβ40も蓄積してくることが明らかとなった。また、小脳血管においてもAβ分子種の沈着は同様の経過をたどったが、Aβの総量が多くなると、Aβ40の比率が瀰漫性老人斑の場合よりも増える傾向がみられた。以上の結果と、小脳切片のコンゴーレッド染色にて重屈折性が認められないことより、小脳では重合して線維化する前のAβの沈着が主体であることが確認できた。今後これらの小脳を用いてAβ重合抑制活性を解析する予定である。

研究成果

• [文献書誌] 玉岡 晃: "アルツハイマー病におけるアミロイドβ蛋白(Aβ)分子種の意義" 日老医誌. 35. 273-277 (1998)
• [文献書誌] Hisomasa Funato et al.: "Quantitation of Amyloid β-Protein (Aβ) in the-Cortex during Aging and in Alzheimer's Disease." Am J Pathol. 152. 1633-1640 (1998)
• [文献書誌] Tamaoka A.et al.: "Increased long isoforms of anyloid-β-protein in brain of subjects with presenilin Imutations and Alzheimer's disease." Mol Brain Res. 56. 178-185 (1998)
• [文献書誌] Shigeru Hoshino et al.: "Emergence of Immuno reacrivities for phosphorylated-fan and amyloid-β protein in chronic stage of fluid-percussion ii" Neuroreport. 9. 1879-1883 (1998)
• [文献書誌] Seiitsu Ono et al.: "Presence of amyloid β protein in skin biopsies of patients with amyotrophic laveral scleiosi,(ALS) and non-ALS controls." Lancet. 351. 956-957 (1998)
• [文献書誌] Harada H.et al.: "Horner's syndrome associated with mononeurit's multiplex due to cytomegalovirus as the initial manifestation in a patient." J Neurol Sci. 154. 91-93 (1998)
• [文献書誌] 原田祐嗣 ら: "発症後2年を経た帯状疱瘡後神経痛にて胸部交感神経ブロックおよび抗うつ薬との併用が発効した1例" 神経治療. 15. 199-201 (1998)
• [文献書誌] 井上智恵 ら: "多発性単ニューロパチーを伴ったリベド血管炎の1例" 臨床神経. 38. 142-145 (1998)
• [文献書誌] 松野佐好子 ら: "頭頂葉性感覚障害にて発症した脳腫瘍の1例" NEURO-INFECTION. 3. 45-46 (1998)
• [文献書誌] 星野幸子 ら: "EBウイルス感染により痙攣を呈し脳波異常が遅延した一例" NEURO-INFECTION. 3. 67-70 (1998)
• [文献書誌] 石井亜紀子 ら: "右下肢痙攣を初発とした大脳病変を伴う肥厚性脳硬膜炎の1例" 脳と神経. 50. 579-583 (1998)
• [文献書誌] 星野幸子 ら: "交代性Horner症候群" 神経内科. 49. 150-151 (1998)
• [文献書誌] Ishii K.et al.: "Dorsolateral pontine tegmental infarction presenting as isolated trigeminal sensory neuropathy" J Neurol Neurosurg Psychiatr. 65. 702 (1998)
• [文献書誌] Harada H et al.: "Downbeat nystagmus in two siblings with spinocerebellar ataxia Type 6 (SCA6)." J Neurol Sci. 160. 161-163 (1998)
• [文献書誌] 佐藤明子 ら: "高血糖症に伴って発症し,両側線条体病変が認められたchorea-ballismの1例" 日内会誌. 87. 2502-2503 (1998)
• [文献書誌] 玉岡 晃: "断綴性言語と爆発性言語" CLINICAL NEUROSCIENCE. 56. 284 (1998)
• [文献書誌] 玉岡 晃: "α1アンチキモトリブシン" 内科. 81. 1533-1535 (1998)
• [文献書誌] 玉岡 晃: "シスタチンC(γ-trace)" 内科. 81. 1531-1537 (1998)
• [文献書誌] 玉岡 晃: "髄液TAU(τ)タンパク" 内科. 81. 1538-1539 (1998)
• [文献書誌] 玉岡 晃: "アルツハイマー病診断におけるアポソポタンパクE遺伝子多型の有用性" 内科. 82. 1177-1179 (1998)
• [文献書誌] 玉岡 晃: "βシート形成阻害剤はアミロイドーシスのラット脳モデルにおいて線網形成を抑制する" Dementic Japan. 12. 219-221 (1998)
• [文献書誌] 玉岡 晃: "Aβ線網形成" 医学のあゆみ. 発表予定. (1999)
• [文献書誌] 佐藤明子 ら: "MRIにて両側大内転筋群に病変を認めた糖尿病性筋梗塞(diabetic muscle infarction)の1例" 臨床神経. 発表予定. (1999)
• [文献書誌] 玉岡 晃: "Louis-Bar症候群 ハイパー臨床内科(CD-ROM)" 中山書店, (1999)
• [文献書誌] 玉岡 晃,松浦雅人: "Adie症候群 ハイパー臨床(CD-ROM)" 中山書店, (1999)
• [文献書誌] 松浦雅人,玉岡 晃: "慢性頭痛 ハイパー臨床内科(CD-ROM)" 中山書店, (1999)
• [文献書誌] 松浦雅人,玉岡 晃: "Creutzfeldt-Jakob病 ハイパー臨床内科(CD-ROM)" 中山書店, (1999)
• [文献書誌] 松浦雅人,玉岡 晃: "Meniere病 ハイパー臨床内科(CD-ROM)" 中山書店, (1999)