研究概要 |
重症筋無力症(myasthenia gravis,MG)は,骨格筋アセチルコリン受容体(acetylcholine receptor,AChR)に対する自己抗体を病因の主座においた臓器特異的自己免疫疾患である.MG発症には胸腺異常が強く関与しているとされているが,胸腺中のリンパ球のみの抗体産生で全身の自己抗体(抗AChR抗体)産生量を説明することはできない。我々は,患者の末梢血リンパ球(PBL)が抗体産生の場の一つであることから,その抗体産生能について研究を進めてきた.これまで、MG患者PBLのIgG産生能が亢進していることを示した。今年度は、PBLが培養液中に産生するサイトカインの産生を測定し、正常コントロールと比較検討した。測定したサイトカインはインターロイキン(interleeukin,IL)-2,IL-4,IL-5,IL-6,IL-10,IL-13,インターフェロン(interferon,IFN)-γ,腫瘍懐死因子(tumor necrosis factor,TNF)-αである。これらのサイトカインはELISA法により測定した。その結果、MGのPBLにおける、これらのサイトカインの産生量は正常コントロール群と比較し有意な差が無かった。しかし、総IgG産生量はIL-6およびIL-10産生量と有意な正の相関をみとめた。以上より、IgG産生亢進はIL-6およびIL-10によるB細胞の多クローン性活性化による可能性が示唆された。
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