1.T細胞特異的免疫抑制剤であるFK506が、アセチルコリン受容体αサブユニット残基番号125-147に相当する合成ペプチド(Hα125-147)で免役して作成したラット実験的重症筋無力症モデル(EAMG)の発症を抑制することがわかった。 2.多くの重症筋無力症(MG)患者において胸腺は、骨格筋抗原に特異的な免疫細胞の貯蔵器として重要な意味を持っているが、胸腺以外の臓器にも免疫細胞の存在部位を求めなければならない。 3.ヒト骨格筋のニコチン性アセチルコリン受容体αサブユニットの一部分である125-147のペプチド(Hα125-147)は、これで免疫したルイスラットのリンパ節T細胞を刺激し、自己抗体を産生させ、EAMGとしての電気生理学的所見を引き起こす。この研究の目的は、このペプチドの中からヘルパーT細胞を活性化させて疾患を誘導する最小のエピトープを見つけ出し、その修飾を試みることである。我々は、Hα129-145が最小のエピトープであることを明らかにした。このペプチドの137番のフェニルアラニンをアラニンで置換したアナログペプチドは、ナイーブペプチドと同様にMHC class IIに結合するがT細胞を活性化させることができない。そのため、T細胞受容体のアンタゴニストと考えられ、治療手段として使える可能性がある。 4.重症筋無力症患者の胸腺細胞を重症複合免疫不全(SCID)マウスの腹腔内に注入したところ、マウス体内でヒトIgGならびにIgMが産生された。このマウスから、胸腺細胞を回収することが可能であった。SCIDマウスの体内で機能を持ったヒトT細胞とB細胞が長期間生存することが可能であった。 5.重症筋無力症患者の末梢血単核球は、骨髄細胞、胸腺細胞と比べてもっとも効率的に坑アセチルコリン受容体抗体を産生し、これは病期が2ヶ月以内と短い患者においても同様であった。末梢血単核球の抗体産生能のモニターは重症筋無力症の疾患活動性の評価に有用であると思われた。
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