研究概要 |
タイラー脳脊髄炎ウイルス(TMEV)を感受性マウス(SJL/Jマウス),及び抵抗性マウス(C57BL/6,BALB/cマウス)に脳内感染させ,TMEVによる免疫性脱髄疾患(TMEV-IDD)を作成した。感受性マウスでは脳内接種後40日ころよりふらつき歩行,後肢麻痺,尿失禁などの神経症状を呈し,80日頃までには全例が発症した。抵抗性マウスは発症しなかった。TMEVの外殻タンパクをコードするp1322BeAn cDNAクローンをEcoRI部位を含むプライマーを用いてPCR法にて増幅,増幅産物をEcoRI部位でpGEXプラスミドに挿入し大腸菌を用いて外殻タンパクの断片をfusion proteinとして作成した。 また外殻タンパクの断片を合成ペプチドとしても作成した。これらの外殻タンパクの断片を採取したTMEV-IDD及び抵抗性マウスの血清と反応させB細胞エピトープをまたリンパ球と反応させT細胞エピトープを同定する検索をおこなった。この結果発症感受性マウスの血清が認識する主たるB細胞エピトープは数個に限られ特にエピトープVP1 262-276が病因及び疾患活動性に深く関与していることが明らかになった。またT細胞エピトープではVP1 233-244,VP2 74-86が重要であることが明らかになった。特にB細胞エピトープVP1 262-276をあらかじめ感作しておくと疾患が抑制されることが明らかになり,脱髄疾患の治療に重要な知見と考えた。今後抗サイトカイン抗体を用いTh1-Th2バランスを変化させることにより治療に結び付く成果を求めていきたい。
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