生理学的ガイディングとCTを併用した手術システムを用いてパーキンソン病患者の淡蒼球内節破壊術を行った。手術は薬物療法で治療効果が不十分であった12例に対し施行し、うち8例で術前と術後1ヶ月の臨床症状を比較した。患者は男性6名女性2名、年齢は29歳から71歳(平均とSDは54.1±12.6)で罹病期間は2年から18年(6.5±5.2)だった。症状の重症度は服薬中のoffの期間にthe United Parkinson's Disease Rating Scale(UPDRS)を用いて評価し、有意差の検定はpaired t-testを用いた。知能・行動・気分に関するスコア総得点は81.8%減少(術前2.2±2.9(平均±1SD)から術後0.4±0.7、p<0.05)、日常生活動作に関するスコア総得点は44.0%減少(術前16.8±13.7から術後9.4±8.2、p<0.01)、運動試験スコア総得点は53.9%減少した(術前38.6±12.3から術後17.8±10.7、p<0.001)。運動試験では手術と対側上下肢と同側上下肢の効果を比較し、随意動作と筋固縮は対側で著明に改善し同側でも有意差をもって改善した。安静時振戦は対側上下肢のみが有意に改善した。1例では最初の手術で淡蒼球内節後部の背側1/4しか凝固できず症状は改善しなかった。2回目の手術で同側淡蒼球内節の中央部、腹側部を凝固し症状は改善した。前頭葉機能を中心とした認知機能評価では、手術後1ヶ月以前では認知機能は低下し、術後1ヶ月以降では術前に回復した。術後早期の認知機能低下は手術侵襲による可能性がある。上肢の長潜時反射では、早期成分は変化しなかったが、後期成分は手術後に減少した。上肢長潜時反射の術後後期成分の減少は、筋固縮の改善に対応する変化であると考えられる。
|