神経変性におけるグリア細胞由来神経栄養因子受容体の分子病理学的研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09670654
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 中村 慎一 京都大学, 医学研究科, 助手 (20231475)
• 研究分担者: 秋口 一郎 京都大学, 医学研究所, 助教授 (30115779)
• キーワード: GDNFR / グリア細胞由来神経栄養因子受容体 / 抗GDNFR抗体 / 神経変性疾患 / 免疫組織化学

研究概要

本年度はGlial cell line-derivedneurotrophic factorレセプター(GDNFR)のアミノ酸配列のN末端部分からGDNFRに特異的な配列部分を選択し、合成ペプチドを作製した。この合成ペプチドとKeyhole limpet hemocyanineをMBS法によりコンジュゲートを作製し、これを免疫原として、家兎に免疫した。10回余りの追加免疫のすえ、高力価の抗血清をえた。抗血清は抗原として用いた合成ペプチドを担体としたアフィニチカラムをもちいて精製した。得られた精製抗体はラット全脳とヒト剖検脳大脳皮質のホモジェネートをサンプルとしたウェスタンブロットにより、いずれについても80kDA付近に単一バンドを検出した。この分子量はアミノ酸配列から予想される分子量に近いものである。したがって、本精製抗体はラット脳とヒト大脳皮質のGDNFR蛋白を特異的に認識すると推測された。
この抗体をもちいて、ラット脳の凍結切片について免疫組織化学染色を行った。その結果、ラット脳の神経細胞の一部に免疫活性を観察した。グリア細胞は全く染色されなかった。陽性神経細胞は、大脳皮質、マイネルト基底核、黒質、基底核などに観察された。さらに、神経細胞のみならず、軸索と考えられる神経突起にも免疫活性を認めた。陽性神経突起の分布は限局的であり、大脳皮質、基底核、黒質、中脳被蓋などに観察された。これらの結果からラット脳でのGDNFRの分布図を作製した。さらに、ヒト脳でも免疫染色を行い、すでに陽性神経細胞を特定の領域に観察している。今後、ヒト脳での分布とパーキンソン病などの神経変性疾患剖検脳での変化を追究する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Nakamura S.: "p35nck5a and cyclin-dependent kinase 5 colocalize in Lewy bodies of patients with Parkinson's disease." Acta Neuropathologica. 94. 153-157 (1997)
• [文献書誌] Nakamura S.: "Cyclin-dependent kinase 5 in Lewy body-like inclusion in anterior horn cells of a patient with sporadic amyotrohic lateral sclorosiS." Neurology. 48. 267-270 (1997)
• [文献書誌] Nakamura S.: "Large neurons in the tuberomammillay nucleus in patients with Parkinson's disease and multiple system atrophy." Neurology. 46. 1693-1696 (1996)
• [文献書誌] Kawamoto Y.: "Immunohistochemical localozation of BRain-Dderived neurotrphic factor in the adult rat brain." Neuroscience. 74. 1209-1226 (1996)
• [文献書誌] Tomimoto H.: "Glial expression of cytokines in the brains of cerrebrovascular disease patients." Acta Neuropathologica. 92. 281-287 (1996)
• [文献書誌] Yasuhara O.: "Pancreastatin-like immunoreactivity in globular dystrophic neurites of senile plaues in braijns patients with Alzheimer's disease." Neuroscience letters. 208. 167-170 (1996)