研究概要 |
グリア細胞由来神経栄養因子(Glial cell line-derived neurotrophic factor、GDNF)はドパミン作動性神経細胞の栄養因子として同定されたグリア細胞由来の神経栄養因子である。現在ではドパミン神経細胞のみなく、脳神経細胞や脊髄前角細胞などの運動神経に対しても栄養因子として作用することが明らかにされている。最近,GDNFの受容体GFRα1がクローニングされた。本研究では抗GFRα1抗体を作製し、この抗体を用いてヒト剖検脳を免疫組織化学的に検索した。GFRα1のアミノ酸配列のN末端とC末端部分からGFRα1に特異的な部分配の合成ペプチドを作製し、これを免疫原として、家兎に免疫して抗血清を得た。得られたを精製した後、特異性の検定と免疫組織化学的検索を行った。精製抗体はラット全脳とヒト剖検脳のホモジェネートをサンプルとしたイムノブロットにて80kDaの単一バンドを認識した。これは予想される分子量とほぼ一致した。免疫組織化学によりラット脳ではGFRα1は神経細胞のみにきよくざいすることを明らかにした。その分布は広範であり、従来考えられていた以上に多くの神経細胞に栄養因子として作用していることが推測された。現在、ヒト剖検脳での局在を検討しており、ヒト脳においてもGFRα1が神経細胞に存在することを観察している。今後、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、アルツハイマー病などの各種神経変性疾患でのGFRα1の局在の変化を検討することにより、GDNFとこれらの神経変性疾患との因果関係の有無を調査する計画である。
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