随意運動の中枢性制御における深部固有感覚の関与をみる為に、全脳型脳磁計を用いて、以下3つの研究を行った。 1。 受動的関節運動時の運動覚知覚 非磁性体の受動的関節運動装置を用いて右手首の伸展運動(4度-12度/0.1秒)を行い、大脳誘発反応を全脳型脳磁図計にて計測した。受動的運動開始後57ミリ秒に一次感覚野の活動、その27ミリ秒後に感覚連合野である後部頭頂葉の活動が認められた。一次感覚野の活動は、運動速度に比例したが、後部頭頂葉の活動には有意な変化は認められなかった。 2。 随意運動中の体性感覚野の興奮性の変化 3-5秒の間隔の自分のペースの右母指ボタン押しと平行して、0.9-1.3秒のランダムな時間間隔で電気刺激を正中神経に与え、電気刺激体性感覚誘発脳磁場を計測した。電気刺激が運動開始後〓OOミリ秒以内に与えられた場合には、一次体性感覚野のN20m成分は減少し、二次体性感覚野の反応は増加していた。後部頭頂葉の電流源は、運動後600ミリ秒以内では抑制、その後300ミリ秒は増大した。 3. 随意運動開始時及び終了時の運動関連脳磁場及び背景脳活動の変化 右示指の伸展運動をすばやく行った場合と、伸展運動にひき続き等尺性収縮を2秒持続した場合の脳磁場を記録した。20Hzの背景脳磁場は、運動開始、終止それぞれの約1秒前より両側の運動野において振幅が低下したが、この現象は等尺性運動の持続中は認められず、20Hzの背景脳磁場は抑制されたままであった。深部知覚の障害を有する患者1名において、片側手関節背屈時の背景脳磁場活動の変化を記録したが、背景脳磁場活動は10Hz、20Hzの両帯域において健常人と同様の所見であった。 運動制御に重要な深部固有感覚は瞬時の応答をしており、一過性の反応には影響を及ぼすが、脳律動のような定常活動への影響は小さいものと考えられる。
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