研究概要 |
本研究では、悪性肢帯型筋ジストロフィー患者の遺伝子異常(特にsarcoglycan遺伝子の異常)を解明し,それと臨床像との関係を明らかにすると共に,本症の遺伝子診断法を確立する。 得られた結果は次のように要約できる. 1.各種特異抗体の作製:各 sarcoglycan(α,β,γ),43kDaDAG,syntrophinなどの遺伝子配列をもとに,それぞれに特異なペプチドを合成し,それを家兔に感作し抗体を作成した. 2.症例の集積:全国の国立療養所を中心に種々の医療機関に依頼し症例の収集を行い,21家系25症例の生検筋組織あるいは血液試料を収集し,生検筋が得られた8家系9症例については,自製及び市販の抗体を用い,免疫組織化学的に筋組織のそれらの蛋白質を検索した結果,12例にsarcoglycanの欠損が認められた. 3.遺伝子解析:Sarcoglycan(α,β,γ)の欠損が認められた8家系9症例については,筋より抽出したmRNAを用いて遺伝子解析を行った.その他の16例のうち8例では,ゲノムDNAの遺伝子解析を行った.その結果α-sarcoglycan遺伝子については,6家系7症例にC229T(Arg 77Cys)の変異が,2家系2症例にC229T(Arg 77Cys)の変異が,それぞれホモ接合型で認められ,3家系3症例にはcompoundへテロ接合型の変異が認められた.γ-Sarcoglycan遺伝子については2家系2症例にエクソン3の欠失が認められた.残りの症例は現在解析中である.α-Sarcoglycanの遺伝子異常はC229Tの変異が多い(半数)ので,まずこの変異を解析することにより約半数の例の遺伝子異常を検出することができることが判明した. 4.遺伝子異常と臨床像との関係:検索症例にはミスセンス,挿入,欠失などの遺伝子変異が認められたが,臨床経過と遺伝子異常の種類との間には明らかな関連は認められなかった.
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