研究概要 |
悪性肢帯型ジストロフィーは、1966年に三好らにより提唱された筋ジストロフィーの一疾患単位である。本症は小児期に発症し、四肢近位部と腰帯部に優位な筋萎縮が認められる。臨床像はDuchenne型筋ジストロフィーに類似しているが、常染色体劣性の遺伝形式を示すのが特徴である。近年、本症の病因として筋細胞膜蛋白であるsarcoglycan(α、β、γ)と蛋白分解酵素であるcalpain3の異常が明らかになった。そこで、我々は悪性肢帯型ジストロフィーの自験例の中で、筋肉の免疫組織検査では筋細胞膜蛋白の欠損を認めない7症例(3家系:男6例、女1例)について、臨床像、筋病理所見,calpain3遺伝子の異常の有無につき検討した。 1. 患者は、5-14歳(平均9.7歳)で発症し、37-42歳(平均38.5歳)で歩行不能となった。2. 筋病理所見では筋細胞の大小不同・円形化、間質の増性などのジストロフィー性変化が見られ、電顕像では散在性にZ帯と隣接するI帯・A帯の筋崩壊像が見られた。 3. calpain3の遺伝子解析では、2家系にG1080C(W360C)のミスセンス変異を、1家系に1796(+A)のframe shift変異を見出した。 以上の結果より、我々の症例ではcalpain3の欠損により筋細胞内の蛋白分解酵素の活性に異常が出現し、まずZ帯が、次いでI帯とA帯の筋崩壊が起こり肢帯型ジストロフィーが発症したと考えられた。さらに我々は、鹿児島大学第3内科との共同研究により、α及びγサルコグリカン欠損患者の生検筋の免疫組織学的解析を行い、各種サルコグリカン蛋白の発現量を同定すると共に、同症の免疫組織学的診断法を確立した。
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