ヒトの視覚情報は、大細胞系(運動視、立体視)と小細胞系(色覚、形態視)から並列的に処理されている。大細胞系は後頭葉から頭頂葉に至る頭頂視覚路を構成し、運動視と空間視に重要である。一方、小細胞系の情報は側頭葉に投射して側頭視覚路を構成し、文字や顔の識別に重要である。この視覚情報の流れを脳磁図(MEG)により非侵襲的に研究した。 1.研究経過 健常者を対象として、(1)色、動きなどの要素的な視覚刺激を用いて、後頭葉内での大細胞系と小細胞系の機能分担がどの様に行なわれているか、(2)文字や顔などの視覚刺激を用いて側頭視覚路の情報処理過程がどの様に行なわれているか、をMEGによる視覚誘発脳磁界(VEF)を記録して時系列的、空間的に解析した。併せて視覚誘発電位(VEP)も記録し、VEFと対比した。 2.研究結果 (1)色刺激ではVEPでN160、VEFでN160mが記録された。一方、動き刺激ではVEPでP120、VEFでP120mが記録された。これらの電流双極子の位置は一次視覚野(V1)に推定された。極性が違うこと、潜時の違いから、V1内での色と動きの情報の並列処理を示唆する所見と考えられた。 (2)文字や顔刺激を用いるとVEPでは頭頂部を最大とするP170が記録された。これに対応するVEFを得るため頭頂葉から側頭葉にかけてMEGのセンサーを動かしてVEFを記録した。しかしながら、単一電流源パターンを示さず、信号源の推定はできなかった。被験者を増やして今後も検討する予定である。
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