研究概要 |
本研究の目的はミトコンドリア(mt)DNAの変異によって生じるmt病の神経・筋変性においてcytochrome c(Cyt-C)によるアポトーシス誘導の関与を明らかにすることであり、このためには以下の実験を行なった。また、MERRFのmRNA変異と筋病理学的特徴の関連を報告した。 1.ヒト末梢血単核球(PBMC)およびマウス培養筋細胞におけるCyt-Cによるアポトーシス誘導の可能性の検討 健常成人PBMCおよびマウス培養筋細胞を用いて種々の濃度のCyt-Cを添加培養し、経時的にアポトーシスの有無を形態学的に観察し、DNAの断片化の有無を検討した。negative controlには薬剤無添加を、positive controlとしてactynomicin D(ACD)添加したものを用いた。ACD添加郡では数時間後よりアポトーシスを起こしたが、薬剤無添加およびCyt-C添加では、72時間の観察期間にアポトーシスを認めなかった。各細胞よりDNAを抽出後、DNA断片化の有無をアガロースゲル電気泳動法により観察したが、薬剤無添加およびCyt-C添加ではDNA断片化を認めなかった。 以上の結果からはCyt-C添加によるアポトーシスは形態学的には明らかでなかったが、これはアポトーシス過程の誘導→決定→実行段階の実行という最終段階をみたものであり、決定に至る過程でのアポトーシス関連蛋白の変化を観察する必要がある。このために、アポトーシス関連蛋白の各種抗体、RT-PCRのためのprimerを作成し、半定量的な評価が出来るようにシステムをセットアップ中である。 2.MERRFのmtDNA変異と筋病理特徴との関連をsingel fiber PCR法、in situ hybridization法を用いて明らかにした。これまでの報告と合わせmt脳筋症の3大症候群(OPEO,MELAS,MERRF)の筋病理の特徴と変異mDNAとの関連を明らかにしたことになる。
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