平成9年度の研究では、本研究の目的である上肢機能の評価のためにその前提となる基礎的研究を行った.脊髄小脳変性症には多くの疾患が含まれ、本邦に多いオリーブ橋小脳萎縮症を中心とする弧発性小脳運動失調症と本邦に多いSCA6とMJDなどの遺伝性運動失調症について、筆圧を研究の主眼として上肢運動失調の検討を行うことを来年度の最終目的とする. そのためにその基礎として、デジタイザーを用いて筆圧ペンにかける圧力と筆圧データ値の特性を測定し、各タブレットと筆圧ペンの特性を測定し、筆圧データをコンピュータで表示するプログラムを作り、デジタイザからの筆圧データ値が表示されることが可能となることを目指した.本年度では、在来のタブレットドライバーについての筆圧に関して、既に開拓され、市販されているソフトとその機能についての検討をした.即ち、その結果は次の如くであった. 入力筆圧と出力筆圧の関係は、筆圧の感触を調節するように、段階づけて設定可能である.また、その関係を変換するように設定が可能であり、その際の書字も記録可能である.しかしその際の筆圧を連続的に記録することは現状では不可能であり、入力と出力の関係もみながら書字に際しての筆圧の絶対値と書字の実態についての連続記録を可能とするプログラムが必要であり、来年度の目標とする. 本年度の研究から健常者では筆圧を巧みに調節することが可能であることがタブレット ドライバーでの筆圧値の観察から明らかにされたが、運動失調では、失調の程度が軽度および中等度では、運動の巧緻性が失われるので入力に際しての筆圧の程度とその絶対値が大きく変化することが予想され、筆圧運続観察記録装置の開発の必要性がさらに明らかにされた.
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