研究概要 |
神経変性疾患の中には神経細胞のDNAの断片化がみられ、アポトーシスの関与が報告されているものがあるが、パーキンソン病(PD)についてはわれわれのグループもすでに一部報告したが、議論のあるところである。神経変性疾患でのアポトーシスの関与をみるために今年度は以下の検討を行った。1)PDの黒質の神経細胞のDNAの断片化を進行性核上性麻痺(PSP)と共にIn Situ End Labeling (ISEL)により検討を行った。PD18例、PSP6例、対照例16例で中脳のパラフィン切片を用いて行った。アポトーシス様変化はPDの3例、PSP3例、対照例6例の黒質でみられ、PSP,対照例の被蓋でも少数みられた。その数は対照例に比べてPD,PSPでは有意な差がなかった。 2)アポトーシスを制御する蛋白のうち、Bcl-xL,Bcl-2の発現をPD7例,対照例6例での黒質で各々の蛋白に対する抗体を用いて、免疫組織化学的方法にて調べた。Bcl-xLが発現する神経細胞はPDでは23.0±5.4%と対照例50.6±8.0%に比し有意に少なかった。Bcl-2の発現する神経細胞の割合はPD,対照群と差がなかった。Bcl-xLの発現の低下がPDでの黒質の神経細胞死に関与している可能性が考えられた。今後、PSPの黒質でBcl-xL,Bcl-2の発現の程度を調べること、他のアポトーシスを制御する蛋白の発現をみること、また他の変性疾患に対象を広げて検索することを予定している。
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