NO合成酵素阻害薬、NOS inhibitorは脳損傷の進展を遅延させるといわれる一方、脳血管を収縮させ、脳血流を低下させることにより、脳虚血を増悪させる可能性も指摘されている。さらにこれらの相反する作用は薬剤投与量に依存性であるともいわれている。そこで平成10年度は、NOS inhibitorとしてNMMAを用いて、各種薬剤量で投与した場合、脳虚血の進展にどのような影響を及ぼすかを効果判定した。 実験にはSDラット58匹を使用した。脳梗塞は頚動脈カテーテル法で右中大脳動脈MCA起始部を閉塞した。6時間後、および24時間後に0.5テスラMRIを用いて、T_2画像を撮影した。虚血側脳皮質・線条体および健常例皮質の信号強度を測定した。 (1) MCA閉塞6時間後の脳虚血に対するNMMA効果は虚血側の脳に対しては保護的作用は認められなかった。しかし、非虚血側皮質に対しては、NMMA少量投与群で有意に信号強度を低下させ、保護的作用が観察された。 (2) MCA閉塞24時間後の脳虚血に対するNMMA効果は虚血側脳皮質に対して、有意に信号強度を低下させ、保護的作用が認められた。 NOS-inhibitorは、神経保護作用を有するものの、脳血流量を低下させるため、大量投与は好ましくないと推論された。
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