肺小細胞癌を伴い、広汎な神経細胞の核に対する自己抗体が出現する傍腫瘍性神経症候群の発症機序を解明する目的で、この症候群の関連神経抗原である神経特異的EIAV様蛋白について、その機能として重要と考えられるRNAとの結合の性状を検討した。我々がヒト海馬よりcDNAクローニングした神経特異的ELAV様蛋白HuC/ple21のdeletionmutant蛋白と、神経細胞の生存に重要と考えられているInterleukin-3(IL-3)のmRNA3′非翻訳配列中に存在するAU-richlelement(ARE)を用いてその結合をRNA gel shift assayにより検討した。HuC/ple21蛋白のアミノ酸構造上に存在する3つのRNA認識須域のうち、RNAとの結合には第IRNA認識領域の全てのbetasheet領域、第1alphahelix領域を構成するアミノ酸のうちの2個のアミノ酸と第2RNA認識領域の第4betasheet領域を構成する8個のアミノ酸がRNAの結合に必須であることを明らかにした。さらには・神経特異的ELAV様蛋白HuC/ple21は、多くの中枢神経自己免疫疾患や感染性疾患において病変に重要な役割を果たしていると考えられ、神経細胞においても産生が証明されているtumornecrosis factor-alphaのmRNA3′非翻訳配列AREと結合することを明らかにした。これらの結果は、神経特異的ELAV様蛋白が神経細胞においてTNF-alphaの産生を制御している可能性を示唆し、傍腫瘍性神経症候群の神経抗原蛋白は神経細胞の生存に重要な役割を果たしていると考えられた。
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