本年度は昨年度確立した部分虚血を用いて血管拡張剤の効果について検討した. 【方法】 1 虚血モデルの確立 部分虚血モデルは昨年報告した方法を用いた。マイクロスフエアー量は100万個を左総腸骨動脈からカテーテルにて注入した。 2. 実験計画 以下の二群にを設定し、末梢神経部分虚血モデル作成後4週間において、末梢神経血流量とBehavior Scoreを比較検討した。 (a)コントロール群;末梢神経部分虚血モデル作成後、通常の餌にて飼育した。 (b)シロスタゾール群;末梢神経部分虚血モデル作成後、3%シロスタゾール含有餌にて4週間飼育した。 3. 末梢神経血流速度測定 前回報告した微小電極水素クリアランス法を用いた。 4. Behavior Score Behavior Scoreの評価法の詳細は前回報告した。 【結果】 末梢神経血流量はコントロール群が8.2±0.3ml/min/100gであったのに対して、シロスタゾール群は10.0±0.3と上昇していたが統計的な有意差は見られなかった。Behavior Scoreはコントロール群4.6±0.5であったのに対して、シロスタゾール群6.8±0.2と有意に改善が見られた(P<0.05) 【考察】 ショロスタゾールはほぼプロスタグランディンE1またはI2とほぼ同程度の末梢神経内血管拡張作用を有していることが明らかにされている。また、シロスタゾールはPGE1やPGI2よりも半減期間が長いので、今回の実験には最も適した薬剤と考えられる。今回の検討結果から、臨床徴候的には血管拡張療法は効果があるものと考えられたが、血流量の値からはその裏付けが取れなかった。これは、血流改善療法が酸素の供給ばかりでなく活性酸素の発生により内皮細胞障害も生じさせている可能性を示唆しているものと思われた。次年度は、この活性酸素の発生についてさらに検討して行く予定である。
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