研究概要 |
平成9年度は、脳卒中易発症高血圧ラット(SHRSP)の脳卒中発症の一因を探る目的で正常血圧ラット(WKY)、高血圧自然発症ラット(SHR)、SHRSPを各々飼育し、4、16、32週齢で脳軟膜微小血管でのHe-Neレーザー法による血栓準備状態と光ファイバー型顕微血流速度計による血流速度の測定を行った。血流速度から壁ずり速度を計算し、各週齢でそれぞれのラットの値を比較した。各週齢のラットから採血し、Griese法による血漿中の一酸化窒素(NO)代謝産物(NO_2/NO_3)量を測定した。血圧は、週齢とともにSHR、SHRSPで有意に上昇した。血栓準備状態は各週齢で変化し、4週齢では最も低く、3種のラット間で有意差を認めなかった。週齢に従って血栓準備状態はWKYに比してSHR,SHRSPで高くなり、32週齢でSHRSPはSHRよりも有意に高くなった。脳軟膜微小血管の血流速度も、4週齢では3種のラット間で差はみられなかったが、16週齢ではSHRとSHRSPの血流速度はWKYに比して有意に低下し、32週齢ではSHRSPの血流速度のみが最も低下した。3種のラットの壁ずり速度も血流速度と同様の変化を示した。NO代謝産物濃度は3種のラットとも4、16、32週齢のWKY、SHR間では差を認めなかったが、32週齢のSHRSPでのみ有意に低下した。以上より、脳軟膜血流速度と壁ずり遠度の低下で血小板凝集抑制作用や血管保護作用を有するNOの産生低下が局所的に生じ、脳卒中発症の増悪因子として働いている可能性が高く示唆された。
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