研究概要 |
当該研究期間での本研究の概要を以下に示す。本研究は次の(1)〜(3)の部分から構成されている。 (1) WKY/Izm,SHR/Izm,SHRSP/Izm3種間の血栓傾向と脳微小循環の比較 (2) SHRSP/IzmのL-arginine投与及び自発的運動の血栓傾向、脳微小循環、脳卒中発症に及ぼす影響 (3) ACE阻害剤imidaprilによる脳卒中予防効果の機序の解明 (1)では、次の結果が得られた。SHRSP、SHRは WKYに比し、血栓傾向が高く、血流速度、壁ずり速度、血流量は有意に低下していた。NOの血漿濃度が脳卒中頻発時期に低下し、脳卒中発症にNOの関与が示唆された。 (2)では、NOを増加させるために4週齢のSHRSP/IzmにL-arginine 投与と自発運動を行い、無処置群と脳卒中発症、血栓傾向、脳微小循環への影響を比較した。上記処量により、血圧は有意に低下し、NO量は、L-arginine投与群では有意に増加した。血栓傾向や、脳微小循環も対照に比して良好で、脳卒中の発症も抑制された。 (3)では、SHRSP/Izm の脳卒中発症の予防が報告されている imidaprilの脳卒中発症予防効果の機序を(1)、(2)と比較検討した。imidaprilは3週間の連続投与により、血圧を有意に低下させ血栓形成を抑制し、NO代謝産物量も有意に増加させた。imidaprilの活性代謝産物imidaprilatの静脈内投与により、脳軟膜の血管径、血流速度、血流量の増加を認めた。 SHRSPでは、NO産生の低下が脳血管径の縮小をきたし、脳血流量の低下を誘導し、さらに脳血管内皮への血小板、白血球の粘着を亢進し、SHRSPの血管壊死性動脈硬化進展に寄与するものと考えられる。血流量の増加は、脳の梗塞を抑制するので、NO量と血流量の低下が複合的に増悪因子として働き、脳卒中発症を高めていると考えられる。
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