研究概要 |
国立精神・神経センター神経研究所の骨格筋バンクに登録されているミトコンドリア脳筋疾患者の骨格筋で、組織化学ならびに生化学的に、こはく酸脱水素酵素(succinatedehydrogenase:SDH)活性の低下した4家系5症例に対して、SDH活性を含む電子伝達系酵素複合体IIの4つのサブユニットの塩基配列を決定した。その結果、症例5のフラビン蛋白(Fp)cDNAに、コンパウンドへテロの2種類の点変異(C1181TとG1793-del)を見いだした。複数の偽遺伝子の存在を示唆するFp cDNAをプローブとするFISHの報告の示すとおり、ゲノムDNAでのPCRで複数のバンドが出現したが、その中の一つに見出した2種類の点変異の存在することを確認した。また、C1181Tは父親に、G1793-delは母親に存在することも確認した。現在、偽遺伝子を含むFpの詳細なエクソン-イントロン構造を解析中である。Fp cDNA塩基配列に変異を見いだせなかった4症例に関しては、2次的にSDH活性を低下させると報告されたsuperoxide dismutase2遺伝子を検索中である。 また,東京大学医科学研究所,北潔博士から供与された回虫のFpに対する抗体による免疫染色で,骨格筋のうち,主に電子伝達系に依存している赤筋(タイプ1)は検出されず,解糖系に依存している白筋(タイプ2)のみ検出されることを見いだした.この事実は,赤筋と白筋で異なるFpサブユニットを持っていることを支持する所見であり,上述した複数のFp類似のDNA配列のうち発現されているものは,何種類なのかを決定することが重要な意味を持つことを示唆している.
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