進行性脳血管性白質脳症には弧発症例の他に常染色体優生遺伝様式(CADASIL)及び常染色体劣性遺伝様式(CARASIL)を示す家族例が見いだされ、その病気の発症・進行に遺伝的要因が重要な役割を果たしていることが判明している。従って、その病因遺伝子を解明は本症発症機序を明らかにすめ重要な鍵である。最近の欧米のCADASIL家系の調査では19番染色体短腕のNotch3受容体遺伝子に点突然変異が発見され、本遺伝子が疾患原因であることが報告されているが、Notch3に連鎖が認められない家系も存在する。そこで、本研究では現在までに集めた日本人CADASIL及びCARASIL家系についてNotch3が病因遺伝子となっているか否かを検討した。Notch3遺伝子の解析は次の様に行った。先ずcDNAをプローブとしてゲノムクローンを分離して遺伝子のexon/intron境界を決定した。得られた塩基配列を基にプライマーを作成して各exonをPCR増幅した後、PCR産物についてSSCP法及び塩基配列決定法により突然変異を検索した。その結果、調査したCADASIL7家系のうち1家系にミスセンス変異(Arg133Cys)が見出され本遺伝子が人種を越えて病気の原因となっていることが明らかとなった(投稿中)。しかし、残りの6家系及びCARASIL1家系にはNotch3遺伝子の変異は認められず、新しい遺伝子の存在が確認された。また、CARASIL家系では染色体の広範囲な欠失は見出されずフィンガープリント解析から病因遺伝子座位は同定できなかった。おそらく点突然変異或いは数塩基の欠失等の遺伝子異常がCARASILの原因となっていると考えらる。今後、これら家系についてはNotch3シグナル伝達に関与する遺伝子についても解析することを計画している。
|