α-glucosidase(acid maltase:AM)欠損症に対するアデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療の効果を動物モデルにおいて検討した。動物モデルとしてAM欠損(AMD)ウズラを用いた。COS-TPC法によりアデノウイルスベクターにCAGプロモーターに支配されるヒトAMcDNA発現単位を構築した(AxCANAM)。これをAMDウズラの線維芽細胞に感染させ2日後にAM酵素活性を測定した。また3週齢の個体の浅胸筋に筋注し、最長84日まで経過を追って解析した。マーカーとして墨を混注した。またLacZを組み込んだアデノウイルスベクター(AxCALacZ)も同様に正常ウズラに筋注し、経過を追って筋切片をβ-galactosidase活性で染色した。AxCANAMを感染させたAMDウズラ線維芽細胞ではMOIに応じて上昇する著明なAM酵素活性の増加を示した。個体に筋注すると、筋注していない筋組織でPAS染色により観察されるglycogenosomeは注射した部位の周辺で消失し、acid phosphatase活性による染色性も低下していた。生化学的にも注射部位のAM活性は増加し、glycogen量は低下していた。これらの効果は注射後14日後までは著明で、28日後まで認められたが、84日後には明らかではなくなった。AxCALaxZを筋注した正常ウズラの注射部位にはβ-galactosidaseが28日後まで安定して発現していたが、84日後には減少していた。アデノウイルスベクターによって導入されたヒトAM遺伝子はAMDウズラの筋組織で発現し局所的ながらglycogenの著積を著明に改善した。現在有効な治療法のない本症において、将来の新しい治療法の候補として遺伝子治療の可能性を示した。
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