神経系による免疫系の制御の分子機構を明らかにする目的で、神経ペプチド2種類、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)と神経ペプチドY(NPY)の、リンパ球に対する効果を検討してきた。そこで本年は、リンパ球上にこれら神経ペプチドに対する受容体分子が存在するかどうか、またそれら受容体からの細胞内シグナル伝達の様式について検討した。 (1)NPYおよびCGRPは、免疫系をTh2優位な方向に偏らせることが判った。 (2)マウスCGRP受容体遺伝子、CRLRとRAMP1を遺伝子クローニングし、両者の同時発現によってCGRPを結合することが判った。RAMP1欠損マウス作成を開始した。 (3)CGRP受容体は、マウスT細胞に発現していることを明らかにした。 (4)COS-7細胞にCRLRとRAMP1の両者を同時発現させた時、CGRP刺激により細胞内cAMPの蓄積が見られた。 (5)NPY受容体のうち、Y1RサブタイプがマウスT細胞に発現していることが判った。ただしY1R欠損マウスでは、Y1Rを代償するようにY2RとY4Rを発現していた。 (6)Y1R遺伝子導入細胞をNPYで刺激したとき、転写因子NF-ATが活性化されたが、AP-1、NF-κB、CRE活性化されなかった。よって、NPYによるIFNγ、IL4産生上昇は、1つにはこのNF-ATの活性化を介してもたらされたものと考える。 以上の事実から、リンパ球にもCGRPやNPYが働き、サイトカン産生に影響することが明らかになった。
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