研究概要 |
1. 糖尿病における運動時赤血球酸素運搬能の障害-糖化ヘモグロビンの酸素高親和性に注目し、糖尿病において運動耐容能と糖化ヘモグロビンが逆相関することを見出した。さらに、赤血球酸素親和性の調節因子である2,3-bisphosphoglycerate(2,3-BPG)とP50(ヘモグロビンが50%酸素と飽和したときの酸素分圧で、酸素解離シフトを反映)の運動時の変化について検討した。糖尿病では2,3-BPGとpHの変化は健常者と差はないが、P50の変化量は少なかった。即ち、糖尿病では運動時酸素解離曲線の右方へのシフトが抑制されていた。2,3-BPGとpHの変化は健常者と同様であることから、糖化ヘモグロビンの酸素高親和性自体が、酸素運搬障害をきたし、運動耐容能低下をもたらすことが明らかになった。 2. 糖尿病患者における運動時血中Kホメオスターシスの異常-運動誘発血中K濃度の上昇は活動筋脱分極によるKイオンの放出とされているが、筋のdeconditioningを反映するものとして注目されている。このK調節の異常が糖尿病の運動耐容能を規定するかどうか検討した。糖尿病患者では、運動量に対するKの上昇がすくなかった。また、K上昇と分時換気量は正相関を示すが、その傾きは健常者に比し、緩やかであった。糖尿病では運動誘発血中Kの上昇が増強、筋細胞内Kが減少し、これが活動電位と筋収縮力の低下を招き、運動耐容能低下の一因と推測された。また、K上昇に対する換気亢進は緩やかで、頚動脈体の感受性低下も示唆された。糖尿病では運動時Kホメオスターシスの異常があり、運動耐容能低下に寄与することが明らかになった。 以上、糖尿病では赤血球酸素運搬能、活動骨格筋の代謝反応の障害があり、運動耐用能低下をきたすことが明らかになった。
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