【背景】高齢急性心筋梗塞症例の予後は不良であるがその原因は不明である。予後不良の原因が高齢者虚血負荷心に対する障害因子・防禦因子反応の何れの異常であるかが判明すれば、この補正により高齢者虚血性心疾患の予後を改善する有効な治療方法が確立される。【目的】代表的老化モデルマウスであるKlotho欠損マウス心の野生型に比べての、虚血・再灌流負荷に対する障害・防禦因子反応性の差異を明らかにする。【方法】麻酔後挿管し開胸・呼吸管理下にKlotho欠損マウス8匹と野生型8匹の左冠動脈を20分間結紮後60分間再灌流した。屠殺後心臓を摘出し、再灌流心筋ミエロペルオキシダーゼ活性・スーパーオキサイドデイスムターゼ活性、再灌流心筋Heat Shock Protein発現量および過酸化脂質量を測定した。【結果】障害因子ミエロペルオキシダーゼ活性は両群再灌流心筋で差が無かった。一方、防禦因子であるスーパーオキサイドデイスムターゼ活性およびHeat Shock Protein発現はKlotho欠損マウス群再灌流心筋では野生群に比べ明らかに低下していた(p<0.0l)。心筋酸化ストレス障害度を示す心筋過酸化脂質量はKlotho欠損マウスの再灌流心筋で野生型に比べ明らかに増大していた(p<0.01)。また再灌流後心室性不整脈の出現頻度はKlotho欠損マウス群で野生型に比し高かった。【総括】老化モデルマウスの虚血・再灌流モデル心では心筋再灌流障害は強く、高齢急性心筋梗塞症例の予後不良に相当する所見であった。 その原因は再灌流心筋でのスーパーオキサイド活性低下、Heat Shock Protein発現量低下などの虚血・再灌負荷に対する防禦系の減弱であり、防禦系の活性化が高齢急性心筋梗塞症例の治療成績改善に重要な役割を果たすと示唆された。
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