研究概要 |
老化現象と動脈硬化を示すマウス(klotho欠損マウス)が確立され,klotho遺伝子の異常であることが明らかにされた.このマウスのホモ個体では,動脈硬化が全身の血管で生じる. このマウスの内皮細胞機能を検討した.6-8週齢のヘテロ型(雄15匹、雌15匹)と野生型(雄15匹,雌15匹)を用いた.胸部大動脈輪状標本のNoepinephrine(NE)に対する収縮反応とAcetylcholine(ACh)に対する拡張反応を,NO合成阻害薬N^G-nitro-L-arginine methyl ester(LNAME)の存在下と非存在下で測定した.LNAME非存在下ではヘテトロ型のNEに対する収縮反応は有意に亢進し,AChによる弛緩反応は低下していた.LNAMEで,NEに対する収縮反応は両個体も亢進したが,その亢進は野生型でより大きく,両個体間の差はなくなった.AChによる内皮依存性血管拡張反応は,両個体ともLNAMEで消失した.このマウスの動脈硬化に内皮細胞機能障害の深い関与が示唆された. NO産生量を測定した.6-10週齢のヘテロ型(雄15匹,雌15匹)と野生型(雄15匹,雌15匹)を用いた.代謝ケージで,24時間の採尿と採便,食餌摂取量と飲水量を測定後,飲料水として精製水またはLNAME500mg/Lを与える2群に分け,10日後に同じ測定をした.食餌摂取量,飲水量,尿cAMP,cGMPには両個体間で差はなかった.雄,雌とも尿中NO代謝物はヘテロ型で野生型の約60%だった.便中NO代謝物は尿中の2-3%であり,両個体間で差はなかった.LNAME投与で,尿中NO代謝物は,野生型でより大きく減少し,両個体間の差は消失した.klothoマウスの内皮細胞機能異常は,NO産生の低下であることが明確となった.klotho遺伝子は,内皮細胞のNO産生を高めることにより血管保護作用を示すと考えられた.
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