研究概要 |
老化現象と全身の血管の動脈硬化を示すマウス(klotho欠損マウス)が確立された,このマウスの表現型の異常はklotho遺伝子の異常に起因している.我々はklotho欠損マウスの大動脈と骨格筋細動脈で内皮細胞機能異常が存在し,この内皮細胞機能異常が一酸化窒素(NO)産生の低下であることを明らかにした. 一酸化窒素(NO)はスーパーオキサイドアニオン(O_2)によって不活化する.高血圧や動脈硬化では,O_2産生が亢進し内皮由来NOの作用を障害する.O_2の存在量はその消去酵素suproxide dismutase(SOD)に影響を受ける.我々は,遺伝子組換えヒトSODにレシチン基を結合させ(レシチン化SOD),SODの組織や細胞膜移行性を飛躍的に高めたレシチン化SODによるklotho欠損マウス大動脈の弛緩反応観察した.6-8週齢のklotho欠摂マウスヘテロ型と野生型を用いた.胸部大動脈輪状標本を作成し,Krebs液中に懸垂しtransducerを用いて等尺性血管収縮弛緩反応を測定した.ノルエピネフリン10^<-7>Mにて前収縮後,レシチン化SOD(0.25〜4.0Unit/ml)に対する弛緩反応をNO合成阻害薬N^G-nitro-L-arginine methl ester(L-NAME)10^<-4>Mの存在下と非存在下で記録した.LNAME非存在下ではヘテロ型のレシチン化SODに対する拡張反応は有意に低下していた.LNAMEでレシチン化SODに対する拡張反応は両個体とも消失し,両個体間の差はなくなった. このマウスの一酸化窒素の低下はO_2の亢進によるNO消去の亢進ではなく,NO産生の低下であることが示された.kIotho欠損マウスのNO産生の低下には,NO合成酵素の発現低下やアルギニン利用能低下などが関与すると考えられた.
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