壁せん断応力が小さくその時間的変動性が大である血管内壁は動脈硬化の危険性に強く曝されている。本研究では壁せん断応力を惹起する血流の3速度ベクトル成分(V)を、MR velocity mappingにより計測し、血管壁近傍における血流速度勾配(dV/dy:壁せん断速度、y:血管壁垂線方向の距離)をベクトル解析することにより以下の知見を得た。 1.MR velocity mappingによる壁せん断速度のベクトル解析は、胸部大動脈における螺旋状血流にも適用可能であった(第61回日本循環器学会学術総会、平成9年4月1日)。 2.胸部大動脈弓部での解剖部位別解析より、壁せん断速度による流体力学的動脈硬化危険因子は、弓部遠位内側壁において最大である(壁せん断速度:最小、時間的変動性:最大)ことが示唆された(AJR 1998;171:1285-1290)。 3.腹部大動脈-左右総腸骨動脈分岐部における壁せん断速度ベクトル解析より、分岐部外側壁は内側壁に比し、壁せん断速度は小さくかつ時間的変動性は大く、壁せん断速度による流体力学的動脈硬化危険因子は分岐部外側壁でより強い傾向が示唆された(第65回日本循環器学会学術総会、平成13年3月26日)。 4.左右腸骨分岐角度と分岐部外側壁における壁せん断速度との関係は、分岐角度が小なるほど小さく、その時間変動性は大なることが判明した(第65回日本循環器学会学術総会、平成13年3月26日)。 MR velocity mappingによる非侵襲的壁せん断速度のベクトル解析は、流体力学的動脈硬化危険因子が強く作用する解剖部位および解剖形態の同定に有用であった。
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