研究概要 |
慢性心不全において交感神経活動の亢進は心不全の増悪要因であり、これに対しβ遮断薬の臨床的有用性が証明されつつある。そこで、交感神経活動を中枢レベルで遮断する治療が本疾患に有効であるかを検討した。【方法】左室駆出分画が45%以下の慢性心不全患者(HF:MYHA II-III)7例と、無症候性心機能障害患者(CD)7例を対象とした。全例、中枢性α2受容体刺激薬であるguanfacine(0.125-0.25mg/日)を投与し、その前後2週間の血圧、心拍数、尿中Na排泄量、左室機能、神経体液性因子、運動耐容能の変化を検討した。【結果】安静時血漿ノルエピネフリンはHF群で高く、guanfacine投与によりHF群(314⇒188pg/ml,p<0.05)、CD群(150⇒121pg/ml,p<0.1)でともに減少した。平均血圧はHF群で低下したが(-7mmHg,p<0.05)、CD群の変化は有意でなかった。尿中Na排泄量および一日尿量はHF群では増大したが(+1.5g/日,p<0.05,+300ml/日,p<0.05)、CD群では不変であった。左室拡張末期容積は両群とも減少傾向を示した。安静時心拍数はguanfacineにより減少したが(HF:-7bpm,p<0.01)、CD:-4bpm,p<0.05)、運動時の最大心拍数、最高酸素摂取量には投与前後で差がなかった。【総括】α2受容体刺激薬により心不全患者の安静時交感神経活動は明らかに抑制された。中枢性交感神経遮断は交感神経活動の亢進した重症心不全において、圧利尿効果や血管拡張などの減負荷効果が大きく、有効性が高いと考えられる。
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