研究概要 |
LDLレセプターノックアウトマウスを導入し、繁殖を開始した。生後2カ月齢より高脂肪食投与群と通常食投与群に分け飼育した。負荷後3カ月、7カ月、8カ月後にsacrificeして上行大動脈の組織学的検討を行った。この結果、負荷後3カ月ではいまだ十分な粥腫の成長がないが、7カ月、8カ月後のマウスでは大動脈根部から上行大動脈にかけて、泡沫細胞に富む粥状動脈硬化の形成を認めた。 アポトーシスの検索の目的で、まず光顕レベルでのin situ nick end labelling(TUNEL)法による染色を施行した。7カ月高脂肪食飼育群では内膜下にTUNEL陽性の細胞の点在を確認した。また電子顕微鏡による観察によりアポトーシスに特徴的な所見を確認しえた。これによりLDLレセプターノックアウトマウスの動脈硬化病変にアポトーシスが関与していることが明らかとなった。 アポトーシス促進因子Bax,Fas,ICE(interleukin-1β-converting enzyme)およびアポトーシス抑制因子Bcl-2について免疫組織学的に検討した。Bax,ICEの発現は7カ月高脂肪食飼育群で陽性の所見を得たか、その染色性は内膜、中膜ともに比較的均一であった。また、Bcl-2が内膜下に発現しておりこれらのアポトーシス関連蛋白の発現の増減が粥状動脈硬化の進展に関与していると思われた。 また、アポトーシスの抑制の目的でICE inhibitorを、アポトーシスの促進の目的でgalicacidを2カ月間連日投与した。しかし動脈硬化病変の大きさ、TUNEL陽性細胞の出現率、アポトーシス関連蛋白の出現率について、未治療群と比較したところ有意の変化は認められなかった。
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